STORY
開発ストーリー

本物より本物らしく
ピアノブラック塗装技術

高級感あふれる美しい漆黒の光沢感。
まるでピアノを思わせるその色調は「ピアノブラック」と呼ばれ、
国内すべての自動車メーカーが、内装デザインに一気に採用するほど大人気に。
本物より本物らしい輝きを放つ高意匠パネルの量産化に立ち向かい、
困難を極めながら技術の確立に挑んだ技術者たちの物語です。

PART.1

光沢感をたった一度の塗装で

高意匠パネルを得意とする冨士ベークが、新たな技術確立を目指して開発に乗り出した「ピアノブラック」は、その光沢感を黒とクリアの重ね塗りで出すのではなく、一度の塗装で実現してしまう技術です。こうした難度の高い技術課題が予想される場合、最初は少量のボリュームで仕事を受注し、量産しながら技術を確立。その後、中国とタイの拠点に技術を横展開するという流れが本来の冨士ベークのやり方です。しかし、「ピアノブラック」を要望する声が急激に増加。一刻も早い技術確立が求められたため、日本、中国、タイの3拠点で開発を同時にスタートすることになったのです。その当時、競合の同業他社も同様に手がけ始めてはいたものの、できないという噂や“良品が半分取れれば上々”という話が伝わってくるほど、「ピアノブラック」の量産化は難しいと言われていました。事実、最初のトライでは100個の良品を取るのでさえもやっとのレベル。これはどうにかしなければ大変なことになる。そんな予感が各拠点の開発メンバーたちを奮い立たせました。

PART.2

不良率98%からのスタート

不良率98%という、かつてない数字でスタートした量産化への道。各拠点で開発メンバーたちの試行錯誤の日々が始まりました。塗装面のゴミや小さな突起、クラック、樹脂成形のウェルド部分が塗装しても消えないなど、あらゆる不具合に対して不良原因を一個一個つかんで対策を重ねていくという毎日。塗装や成形でわからないことがあれば、それぞれを専門とする開発メンバーから知識を教わったり、自分で考えついた方法を他のメンバーにぶつけて意見を聞いたり、そうしてお互いに補い合いながら、3国間で競い合うように経験値を積み重ねていきました。良品の確率が上がる方法を見つけるための工夫は数知れません。塗料メーカーとタイアップして独自ブレンドの溶剤を作り、塗料をチューニング。さらに塗装工程の「見える化」や風の流れを確認するためにセンサーを取り付けるなど、塗装設備そのものも自分たちで次々に改良。失敗や成果を3国間で共有化していくことで徐々に軌道に乗り、8カ月後には不良率を20%まで改善することができたのです。

PART.3

未知の技術に挑戦するDNA

不良率20%でも満足しないのが冨士ベークの技術者たちです。目指すのは一桁違うレベル。成形条件、塗装加工、その前後工程、出荷用の箱に入れるところまでトータルな仕上げを極めてこそ生み出される、真似のできない高品質の「ピアノブラック」。完成の域に到達してもなお、厳しい視点で自らの技術を磨き続けています。もちろん、これは一例にすぎません。ヨーロッパ車の厳しい環境基準に対応した水性塗装技術をはじめ、2色成形技術などを確立。さらに現在は、塗装では実現できない多様な柄で表面加飾を行う「フィルムインサート成形」などのいろいろな技術テーマが進行中です。いずれも、高精度な成形加工技術と高意匠の加飾加工技術を同時に発揮することで、新しい技術を確立する世界。より精密に、より機能的に、より美しく、より低価格に、誰にもできない領域を求めて果敢にチャレンジを続けていく。それが冨士ベークのDNAです。未知の世界へ向けて、この先もチーム一丸となって挑戦していきます。